相続・遺言

相続の開始と相続登記

人がお亡くなりになると、相続が開始します。

相続が開始した場合、原則として、お亡くなりになった方のプラスの財産(資産)もマイナスの財産(負債)も、相続人が引き継ぐことになります。

お亡くなりになった方の財産の中に不動産がある場合、その不動産について、相続人の名義に変更する必要があります。

この、相続人の名義に変更するための手続が、相続登記になります。

 

遺言の有無の確認・遺産分割協議

それでは、誰がそのお亡くなりになった方の不動産を引き継ぐのか、ということになります。

これについて、まず、お亡くなりになった方に遺言があり、その遺言の中で、お亡くなりになった方が所有していた不動産を取得する人が指定されていれば、遺言の内容にしたがって、その指定された人が該当の不動産を取得することになります。

ですので、相続が開始した場合、まず、お亡くなりになった方が遺言書を残していないかどうかを確認していただくことになります。

お亡くなりになった方に遺言がなければ、お亡くなりになった方の相続人全員の話し合いで、相続人の中から各不動産を取得する人を決めることになります。

お亡くなりになった方の財産の中に、不動産以外にも預貯金やその他の財産があれば、相続人のうちの誰がその預貯金やその他の財産を取得するのか、といったことも、相続人全員の話し合いで決めることになります。

この相続人全員の話し合いを、遺産分割協議といいます。

 

相続人が誰かの確定(戸籍謄本等の収集)

遺産分割協議は、相続人の全員で行う必要がありますので、誰が相続人なのかを、戸籍謄本等を収集して確認することになります。

ご家族であれば、誰が相続人になるのかがわかっている場合も多いと思われますが、この相続人全員を確定するための戸籍謄本は、不動産の相続登記や、金融機関で預貯金の相続手続をする際に必要になります。

それでは、戸籍謄本等として、どのようなものを収集すればよいかについて、以下でご説明いたします。

以下では、夫が亡くなり、妻と子が相続人、という、代表的な場合について説明いたします。

(お亡くなりになった方に子がなく、お亡くなりになった方の直系尊属(父母・祖父母)あるいは兄弟姉妹が相続人になる、という場合には、必要となる戸籍謄本等がより複雑になりますので、このような場合には、個別にご相談いただければと存じます。)

  • お亡くなりになった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
  • 相続人全員の戸籍謄本(お亡くなりになった方の死亡日以降に取得したもの)
  • お亡くなりになった方の住民票の除票(本籍の記載があるもの)、あるいは戸籍の附票(住民票の除票が保存期間の経過で廃棄されている場合)

戸籍謄本は、本籍がある市区町村にて取得することになります。その本籍がある市区町村が遠方の場合には、該当の市区町村役場に郵送で請求することになります。

戸籍謄本等の収集がご自身では難しい場合には、相続登記のご依頼がある前提であれば、司法書士が収集することもできますので、ご相談ください。

 

相続財産の確認

お亡くなりになった方の不動産について、どこにどのような不動産があるかが分からない、ということもあるかと思われます。

お亡くなりになった方が所有していた不動産を調べたい場合は、不動産があると思われる市町村で次のもののいずれかを取得していただくと、お亡くなりになった方の名義で固定資産課税台帳(市町村が固定資産税を課税するための台帳)に登録されている、土地・家屋の情報を取得することができます。

  • 固定資産評価証明書・固定資産評価通知書 (土地および家屋について、お亡くなりになった方の登録物件全部で取得していただくことになります。ただし、浜松市では登録物件全部での請求ができますが、登録物件全部での請求ができない市町村もありますので、その場合は次の名寄帳を取得していただくことになります。)
  • 名寄帳

相続人の方が、お亡くなりになった方の固定資産評価証明書等を請求する場合には、お亡くなりになった方と請求者との相続関係を証明するための戸籍謄本等が必要になります。

不動産以外の財産で、預貯金や借入金などの金融機関との取引を調べたい場合には、その金融機関にて、お亡くなりになった方の死亡日現在での残高証明書を取得していただくことをお勧めいたします。

 

遺産分割協議書の作成

戸籍謄本等が収集できて相続人が確定し、お亡くなりになった方の財産(遺産)に関する資料も取得して遺産の調査もできたら、相続人全員で遺産分割協議を行って、誰がどの遺産を取得するか、を話し合うことになります。

そして、誰がどの遺産を取得するかが決まったら、その結果を、遺産分割協議書という書面にまとめ、相続人全員が署名と実印での押印をします。また、相続人全員の印鑑証明書もそろえます。

相続人の印鑑証明書の有効期限について、不動産の相続登記においては、印鑑証明書の有効期限は特に定められていません。ただ、金融機関で預貯金等の相続手続をするに際しては、金融機関ごとに、印鑑証明書に一定の有効期限(発行日より6カ月以内等)が設けられておりますので、各金融機関にご確認ください。

遺産分割協議書の作成にあたって、不動産や預貯金等については正確に記載する必要がありますので、司法書士等の専門家に作成を依頼されることをお勧めいたします。

 

相続登記の申請

遺産分割協議書が作成でき、その他戸籍謄本等の必要な書類もそろったら、不動産の所在地を管轄する法務局に、相続登記を申請します。

相続登記については、特に期限は定められていません。もっとも、相続登記をせずに長期間放置しておくと、手続きが煩雑になってしまい、場合によっては相続登記をすることが困難になってしまうこともありますので、なるべく早めに相続登記をしておきましょう。

 

相続登記の費用

司法書士に相続登記を依頼する場合に気になる費用ですが、主にかかる費用の項目として、

  • 相続登記の申請手数料
  • 遺産分割協議書の作成手数料
  • 相続関係図(戸籍謄本等をもとに、お亡くなりになった方と相続人全員との関係を図にしたもの)の作成手数料
  • 戸籍謄本等(取得の依頼があった場合)、固定資産評価通知書、不動産の登記簿謄本等、の取得手数料

といったところが一般的です。

相続登記をする不動産が自宅の土地建物だけで、それを相続人のうちの1名が取得する、という場合では、司法書士報酬としては、だいたい5万円から10万円の範囲におさまります。

実際にどれだけの費用がかかるかは、相続登記をするにあたってどれだけの処理が必要で、どれだけの項目の費用がかかるかによりますので、ご相談ください。

その他、実費として、

  • 登録免許税(税額は、相続登記をする不動産の固定資産評価額に税率1000分の4をかけた額(100円未満切り捨て)となります。)
  • 戸籍謄本等、不動産の登記簿謄本等の取得費用

などがかかります。

登録免許税を計算するために必要となる、不動産の固定資産評価額を知りたい、という場合には、毎年4月ごろに市町村から郵送されてくる固定資産税の納税通知書・課税明細書をご確認いただくか、あるいは固定資産評価証明書・固定資産評価通知書・名寄帳などを取得していただければ、それらに固定資産評価額が記載されていますので、それで確認することができます。

具体例

上記の説明だけですとわかりづらいと思われるので、以下、具体例でご説明いたします。

例:ご自宅の土地1筆(固定資産評価額:700万円)と建物1棟(固定資産評価額:300万円)を相続人1名が相続するという相続登記をする場合。

(遺産分割協議書の作成と、戸籍謄本類の収集を当事務所に依頼して頂き、戸籍謄本類6通を当事務所で収集した場合。この場合、依頼者様の側でして頂くこととしては、相続人全員の印鑑証明書と不動産を取得する方の住民票の取得、遺産分割協議書への署名押印、といったところになります。)

司法書士報酬 実 費
項 目 金 額 項 目 金 額
相続登記 36,000  登録免許税 40,000 
遺産分割協議書作成 5,000 
相続関係図 5,000 
戸籍謄本類収集(※) 6,000  取得費用(※) 3,900 
固定資産評価通知書 2,000 
登記簿謄本取得 2,600  取得費用 1,630 
①合計(税抜) 56,600  ③合計  45,530 
②消費税  5,660 
総合計(消費税込)(①+②+③) 107,790 

(※)戸籍謄本類を依頼者様で収集していただける場合は、この戸籍謄本類の収集にかかる報酬は発生しません。

(上記はあくまで一例で、具体的な金額はいろいろな条件により異なることをご了承ください。)

 

遺言の作成

お亡くなりになった方が遺言を残していなかった場合には、相続人全員で、お亡くなりになった方の財産(遺産)について、誰がどの財産を取得するかを話し合うことになります(これを「遺産分割協議」といいます。)。

そうしますと、ご自身が亡くなった後、相続人間で遺産の分け方について話し合いをすることが困難となることが予想される、という場合には、あらかじめ遺言を作成しておくことも、有効な手段となります。

例えば、次のような場合には、相続人全員で遺産分割協議をすることが困難となる、ということが多いと考えられますので、遺言を作成する必要が特に強いといえます。

  • ご夫婦の間に子どもがいない場合(この場合には、残された配偶者と、お亡くなりになった方の直系尊属(父母・祖父母)あるいは兄弟姉妹との間で、遺産分割協議をすることになります。)
  • 再婚をし、先妻の間の子どもと、後妻がいる場合(この場合は、先妻の間の子どもと、後妻との間で、遺産分割協議をすることになります。)

また、そのほか、ご自身がお亡くなりになった際には、相続人以外の人にご自身の財産を渡したい、という場合にも、遺言を作成することが必要になります。